【前回「丸山千枚田で-2」の続編】




3つの危機の【その2】

農作物などに対する獣害です。

時にひどいのが①鹿 ②イノシシ ③猿です。

農林水産省の報告では。平成30年の被害が

 鹿害→54億1千万円

 イノシシ→47億3千3百万円

 猿→8億2千3百万円

三獣合計=109億6千6百万円で

獣害合計=128億8千1百万円の85%に達します。

政府は自治体と協力して獣害対策として、下図のような対策を出しています。




2011年の鹿・イノシシ418万頭を2023までに半減202万頭にするという計画です。

が、重大な問題が起きています。

鹿については、飛躍的に捕獲数を増やしてきたのも関わらず、減るどころか逆に増えている!!


京都府の報告でも

「捕獲数が30年間で約36倍にも激増しているにもかかわらず、個体数は依然増加傾向である。

シカの増加率は年に20~30%にも達するので、放置したらさらに激害が起こることは間違いがない。

その意味では、個体数調整を主とした管理によって、

辛うじて個体数が激増することは防止できているという状態である。」

という惨憺たる有り様です。


個体数だけでなく、前述の農林水産省の統計で

被害額も対前年比でイノシシが48.6%、猿が79.8%なのに対して

鹿害は逆に増え117.1%となっています。

この獣害を早急に改善しない限り、今後の農業は、壊滅的になります。

当面の方策として柵で農地を囲み、作物を守っていますが、この方策にも限度がある上

農家の負担が膨らみます。




最近京都市でも鴨川に鹿の姿が見られるようになりました。

農家以外の多くの人は、鹿の害の恐ろしさを知らない人が多いので少し述べておきます。

鹿害の一番の問題は、植物の新芽や葉を食い尽くし、桜などの樹木に大きな傷をつけます。

第二は、鹿はヤマヒルの配布者でもあります。

しがたって、鹿が民家の近くに現れるようになるとどういうことになるかです。

毒花以外の花類はすべて食い荒らします。庭の花やプランターの花は全滅です。

コスモスや紫陽花もバシバシたべて、枯らしてしまします。

鹿が闊歩する地域は、「毒草園」になります。毒草しか残らないのです。

さらに花壇などには、ヤマヒルが住み着き、人を襲います。

このヤマヒルは、一度血を吸ったら、1年間何もしなくても生きていけるという生き物です。

鹿の蹄の間にくっついて、あちこちに仲間を広げます。

鹿を見て可愛い何て言ってる場合では無いんです!




【その3】

農業の危機は、国土の危機でもあると思います。

農業で営業利益を考えれば、棚田は一番に敬遠されます。

棚田ほど効率の悪い稲作はありません。

営業利益を考えれば、平地で広い水田でトラクターで稲作ができる方が選ばれます。

従って、棚田は、手厚く保護支援がされなければ、消えていきます。

棚田が消えれば,どうなるでしょうか?

まさに放置された土地となり、その多くは、ススキなどに覆われて荒れていきます。

そこは、イノシシの住処となります。




また、農業の技術、農業と環境との関係などが、危うくなる。

今回、丸山千枚田で出会った人たちの作業は、田んぼに除草剤を散布することでした。

放置しておくと稗がはびこり、稲作がやりにくくなるといういうのです。

風景としての丸山千枚田は、ステキだと思いますが、

私は、そこで採れたお米を食べる気になりません。

食の安全という面での管理は、どこが行うのでしょうか?














今回の旅で思ったことを、率直に書いてみました。

これがただの口や苦言で終わるのではなく、何かの参考に役立てばと願っています。

最後に、農業災害とも言える獣害対策については、自治体も害獣駆除に力を入れていると

思いますが、現実は目標に対して、実績が大きく遅れています。

風水害だけでなく、この農業災害についても、私は自衛隊の出動を強く要望したいと思います。

このままでは「美しい国」が「荒れ果てた国」に

「豊かな農村」が「消えゆく農村」になるのでは、ないでしょうか?


                                   -おわり-


*このページの写真は、丸山千枚田とは、関係ありません。