友人が熱を込めてすすめる「同志少女よ、敵を撃て」という本を買って読んだ!

確かに面白いし、考えさせられる。

約500ページの長編がなぜか短く感じるくらいだった!

ソ連の狙撃兵の作品を日本の作家が書いたという点でも興味深い本だった。




以下は友人の推薦のことば!



日本の作家が独ソ戦を真っ正面から取り上げた長編小説。

ソビエト時代のロシア人の世界をよくここまで調べ上げたものだ。

多数の資料に当たっている。

文章は練れていて戦争描写は精密で、戦車戦、狙撃兵の息詰まる活動など臨場感に溢れ、

また、スターリン体制下、複雑なソビエト社会の実情にも分け入り、

うら若い少女たちの心理描写もしっかりしている。


文句なしに面白く、息もつがずに読ませてくれる。


第二次世界大戦はもちろん、人類史上最大規模と言われる独ソ戦。

1941年6月、ソビエト西部国境全線に亘ってドイツ軍機甲化部隊と空軍がなだれ込み、

独ソ不可侵条約に油断していたソビエト軍をなぎ倒しながらあっという間にモスクワ、

レニングラードに迫った。

モスクワはかろうじて防衛されたが、第二の大都市レニングラード(現サンクトペテルブルグ)は以来、

900日間の包囲戦に耐え、100万人の戦死者(ほとんど餓死者)を出したとされる。


(ショスタコーヴィッチは包囲下のレニングラードで第7シンフォニの作曲に着手し、「レニングラード交響曲」として戦うレニングラード市民に献げた。

マイクロフィルム化されたその楽譜は密かに国外に持ち出され、アメリカでトスカニーニ指揮で初演、

全世界に放送された。

包囲下のレニングラードでの初演にまつわる逸話も感動的!

この有名な曲のメロディが武田薬品のテレビコマーシャルに使われていたことがある。)


1942年末、

南部の工業都市スターリングラード(現ヴォルガグラード)に突入したドイツ軍と

ソビエト軍との間では、空爆と戦車の砲撃で廃墟と化した市街で

文字通り一寸の土地を争う市街戦が戦われたが、

1943年冬のソビエト軍の反抗で30万人のドイツ軍が包囲されて降伏し、

独ソ戦の帰趨は決まった。ドイツ軍の敗退が始まり、ベルリン陥落に至る。


スターリングラード戦を舞台に狙撃兵の少女たち(誰もがドイツ軍に肉親を皆殺しされた不幸を背負っている)の活動が本書のテーマである。


独ソ戦争は「絶滅戦争」だった。

ユダヤ人とロシア人は劣等人種であり、地上から抹殺する、

何をしてもかまわないというナチの方針下で行われたドイツ軍の市民への蛮行の数々、

復讐心に燃えたソビエト軍の報復(それはドイツ領土に攻め込むや一般市民にも向けられた)、


報復心を煽る作家イリヤ・エレンブルグ(この作家の意外な側面を知る)。

第二次大戦でのソビエト側の戦死者2700万―3000万人。


ドイツ軍900万人。

まさに史上空前の絶滅戦争だった。

ちなみに日本人の戦死者310万人(軍属230万人 市民80万人)。


物語は後半、ドイツの古都(要塞都市)ケーニヒスベルクに移り、意外な展開を見せる。


800m先の敵兵の頭をスコープ付きの銃で狙撃する少女狙撃兵たちの物語りだが、

少女たちの正義感と友情が作品全体を温かいものにしている。


なお、昨年ベストセラーになっていた「独ソ戦―絶滅戦争の惨禍」(大木毅 岩波新書)は

この戦争の実態をリアルに描き出していて読み応えがある。











この「独ソ戦-絶滅戦争の惨禍」を読んで、「同志少女よ、敵を撃て」を読むと

作品の理解が深まると思います。

みなさまにも超お勧めの一冊です。




      (カフェで会った仲がよくて、お行儀も良いシベリアンハスキー犬)