2016年7月9日 

机の整理をしていたら、引き出しの奥から旧い手帳が出てきた。
昔々の手帳である。
パラパラとめくって眺めていたら、
歌詞が書かれていたページがあった。

眺めていると
とっくに忘れていた歌声が一瞬にして蘇ってきた。
「追憶」という歌である。
その歌を歌っていた若者の姿までが蘇ってきた。

それは、祇園祭も終わった8月の蒸し暑い夕暮れどき
京都三条大橋のたもとで、青年がギターを弾きながら
一人で歌っていた。
足下に置かれたギターのケースには、
幾ばくかのお金が放り込まれていた。
立ち止まって聴く人もいない。



が、私は立ち止まってしまった。
彼の歌が私の後ろ髪を引いたのだ。
自分の心の奥底まで呼びかけているような気がした。
で、彼の歌の入ったテープまで買ってしまった。

今、そのテープがどこにあるのか思い出せないが
捨てたわけじゃないので、私の部屋のどこかに眠っているはずだ。
私は、この出会いを機に、なんどか彼のライブに参加した。

小さなライブハウスの30人ほどの聴衆の一人だった。
しばらくして、彼からハガキをもらった。
有限会社を設立したこと、住所兼事務所の案内が記されていて
京都だけではなく、大阪・神戸でも演奏が出来るようになったと
書かれていた。
シンガーソングライターとして成功の道を歩み出したのだと思った。

あれから何十年という時が流れてしまった。
今、あの青年は、どんな人生を歩んでいるのだろうか?
名前さえ忘れてしまっているが、気になってきた。
私の中では、彼の名前は、忘れ去られてしまったが
この歌だけは、今も鮮やかに蘇ってくるのだ。

下記の歌詞は、私が彼から買ったテープから書き出したのもである。

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      追憶

  すててしまった夢がある
  すてなきゃいけない夢がある
  すてちゃいけない夢がある
  どうしても捨てられない夢がある

  夕暮れの水辺に
  腰を下ろせば
  あふれる涙でにじむ水鳥

  すてなくちゃいけない人がいる
  どうしても捨てられない女がいる

  やり過ごしてしまった思いがある
  やり過ごさなくちゃいけない思いがある
  やり過ごしちゃいけない思いがある
  どうしてもやり過ごせない思いがある

  ふるさとのなよ風に
  抱かれてみたいけど
  思いは遙か遠く
  西の彼方へ

  やり過ごさなくちゃいけない人がいる
  どうしてもやり過ごせない女がいる

  夜空に瞬く
  星を訪ねて
  明日の空模様教えてもらおうか

  忘れなくちゃいけない人がいる
  どうしても忘れられない女がいる。



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今も彼はこの歌を歌っているのだろうか?
もし、彼が私のこのブログを見ることがあったら
是非連絡をして欲しいと思う。

そして、
どうしても捨てられないもの、
どうしても忘れられないものについて
お互いに語り合いたいものである。
そこからまた、何かが生まれてくるような気がする。

今年もまた、京都に暑い夏の日が訪れてきた。